過去の会長挨拶はこちら

日本作物学会の皆様へ

会長 大門弘幸
(龍谷大学農学部)

 この3年余りの間,国内外における新型コロナウイルスの感染拡大は,様々なかたちで私たちの研究活動に影響を及ぼし,本学会をはじめ各学協会の活動を制限してきました.未だ必ずしも安心して生活できる状況にはありませんが,新年度からは,多くの組織においてコロナ前に近づけるかたちで諸活動を進めていくことになるのでしょう.会員の皆様方の研究活動が遅滞なく進むことを願っております.
 さて,執行部をお引き受けして1年が経ちました.現執行部では,これまで任意団体であった本学会を「一般社団法人」として新たに展開させるべく準備を進めてきました.これまで,歴代の会長のもとで法人化の諸課題が整理されてきましたが,現執行部では,大川副会長を座長に学会法人化準備委員会を設置し,「定款」および「会員及び会費細則」を制定し,本年3月2日に法務局に登記申請書を提出し,3月9日に登記が完了した旨の連絡を受けました.これまで本学会の法人化に関して,会員各位には様々な視点からご検討,ご協力を頂きました.誠にありがとうございました.今後は,2024年3月までは任意団体と一般社団法人を並立させ,2023年11月から2024年2月にかけて,一般社団法人の代議員選挙と代議員による会長選挙を行い,2024年3月に「任意団体 日本作物学会」の総会を開催してこれを解散し,同時に「一般社団法人 日本作物学会」の第一回会員総会を開催し,新たな体制をスタートさせます.法人化により本学会の社会的な位置づけがさらに明確になります.今後も会員の皆様がより活動しやすい環境を整えていければと考えています.会員相互の交流をこれまで以上に進め,作物学の進展にご尽力を頂きますようよろしくお願いいたします.
 本学会は,2027年に創設100年を迎えます.柏木委員長のもと,広報委員会のご尽力により,講演会ホームページには,「100年そしてさらにその先へ(100th and Beyond)」をイメージさせた新たなロゴを冠しました.現在,学会ホームページの刷新に取り組んで頂いているところです.本間副会長には,100周年の節目の事業として,これまでの学術成果を振り返り,またこれからの作物学が目指す方向性を示唆するレビュー論文集の発刊について,両編集委員会と協力して進めて頂くことをご提案頂き,評議員会で認めて頂きました.準備が整いましたら,会員各位からの積極的な投稿をお願いいたします.
 一昨年の名古屋でのACSAC10をはじめ,コロナ禍の中での講演会をオンライン開催としました.そのメリットとデメリットについて,執行部として会員各位のご意見をうかがってきました.コロナ禍以前に論議してきました講演会のあり方については,春の講演会開催地として,関東地区に加えて東海地区と近畿地区を加えることになり,2024年春は三重大学において開催することとなっております.一方,オンライン講演会という新たな形態での開催を実際に複数回に亘り経験したことから,このような開催形態を含めた講演会のあり方について,本間副会長を座長としたワーキンググループで検討して頂いています.会員各位のご意見をお寄せください.
 萩原委員長のもと和文誌編集委員会では,投稿規定および原稿作成要領の一部改訂を進めて頂きました.これは執筆のしやすさや校閲者の労力削減を目的の一つにしたものです. また,東江委員長のもとご尽力頂いている英文誌編集委員会の報告では,国内外からの投稿数は順調に推移し,PPSのIFは2.471と上がってきています.引き続き多くの会員の皆様の投稿をお願いいたします.
 学会の社会貢献,アウトリーチ活動については,法人化後はこれまで以上に学会の重要な取り組みになります.これは設立された法人の役割の一つでもあります.現在,新田部長のもと出版部におきまして,「毎日の食事が楽しくなる 農作物の超おもしろ雑学(仮題)」を発刊すべく準備が進んでいます.さらに中高生にもわかりやすい作物学のレビュー集の企画をも進めて頂いています.
 学会活動を進めるために財政基盤が重要なことは当然です.そのために会費の値上げを一昨年に行いました.一方で,本年3月の段階では会員数が昨年より微減している現実があります.会員の皆様には作物学に興味をお持ちの方々に入会をお勧め頂き,同学の志の広がりをさらに大きいものにしていって頂ければ幸いです.なお,2022年には,科学研究費補助金の研究公開促進(シンポジウム補助)とPPS刊行を支援する国際情報発信強化に関していずれも採択されましたが,これらの補助金への依存度が高いのが現状です.この点,会員の皆様にもご理解頂きたくお願いいたします.
 大川委員長のもと,春の東京農工大学における第255回講演会では,対面による講演会に加え,久しぶりに懇親会も開催することができました.秋の第256回講演会は鄭委員長のもと,9月14~16日に佐賀大学で開催されます.多くの方々にご出席頂き,講演会の場を利用した会員相互の交流をより深めて頂ければ幸甚です.
 以上,この1年間を振り返り,会長からの挨拶とさせて頂きます.引き続き,会員の皆様の学会活動への積極的なご参加をお願いいたします.

2023年6月