過去の会長挨拶はこちら

日本作物学会会員の皆様へ

会長 山岸順子

 2020年5月1日より日本作物学会2020-2021年度の新執行部がスタートを切りましたこと,ご報告申し上げます.COVID-19の感染拡大防止のため,社会全体がこれまでの“普通”や“当然”では無くなっている状況の中で,例年より1ヶ月遅れましたが曲がりなりにもここに出発となりました.この数ヶ月の間,第249回講演会が中止され,また幹事会,評議員会,総会すべて異例の方法で行われてきましたが,会員皆様の多大なるご支援により引き継ぐことができました.前執行部,評議員,各委員会委員,会員の皆様に心よりお礼を申し上げます.

 これまで日本作物学会は講演会開催と学会誌発行を最重要視して運営されてきました.しかし,第249回講演会が中止されたのに加え,名古屋国際会議場で開催予定であった第10回アジア作物学会議(ACSAC10)の延期が決定し,さらに併催予定であった第250回講演会の予定通りの開催は中止されました.会員の皆様の研究成果の発表の機会が著しく減ってしまったことをここにお詫び申し上げます.そこで,第250回講演会につきましては,このような状況の中で開催可能なオンライン講演会として行うことを予定しており,現在,広報委員会情報管理責任者の阿部淳先生を中心に実施に向けて緊急協議しております.会員の皆様におかれましては,オンライン講演会にご参加下さいますようお願い申し上げます.

 また,例年総会において皆様に新執行部の紹介とご挨拶をさせていただくのですが,今回はそれがかないませんでした.したがいまして,ここにお名前を列挙させていただくことで代えさせていただきます(敬称略).

 (副会長)大門弘幸,大川泰一郎,(庶務幹事)辻博之,八木岡敦,(会計幹事)岡元英樹,出口哲久 2年間,どうぞよろしくお願い致します.

 この文章のあとに添付致しますのは,COVID-19の感染拡大防止のため社会の状況が激変する直前に私が所信を記したものです.多くの日程や予定が変更されておりますが,基本的な考え方には全く変わりはございませんので付けさせていただきます.ご理解の上,お目通し頂ければ幸いです.

会長就任にあたり皆様へ

 2020年4月から2年間,会長を務めさせていただくことになりました.会長選挙にあたってご推薦いただいた先生方,ご信任くださった会員の皆様には心よりお礼申し上げます.

 日本作物学会は,作物の特性と生産の諸原理の解明および技術開発を通じて,長く農業の発展に貢献してきました.そして,現在,世界規模で進行している人口増加や地球環境変動のもとで,日本と世界の作物生産に対する責務を自覚し,貢献することが期待されています.生命科学,情報通信科学,機械工学などの進歩が著しい中にあって,作物学は安定的で持続可能な作物生産における“要”です.収量と品質,安全・安心,環境保全,省力・省エネルギー,防災・減災など多くの課題の中で,研究を推進する必要があります.そのために,情報共有の場として,そして各会員のさらなる研究の発展を支える場として,日本作物学会のより一層の活性化に取り組んでまいりたいと思います.

 これまで執行部が取り組んできました講演会開催と学会誌発行を最重要視しながら,国際活動などの活性化をはかる方針を継承し,また,2018年3月に出された将来構想検討ワーキンググループ(大川泰一郎先生座長)からのご提言に基づき,財政や講演会のあり方について検討・実施されてきた事柄を今後とも注視していきます.さらに,これらに加えて,次にあげる諸課題を中心に皆様からのご提案と各支部会のご意見をふまえた上で,作物学の将来を見据えた学会運営に取り組みたいと思います.1)ACSAC10(名古屋)の実施とそれに呼応した国際活動強化,2)和文誌・英文誌の一層の充実と発信力強化,3)財政健全化と科研費への対応,4)若手・女性研究者の交流・育成のサポート,5)作物学と作物学会の将来ビジョンに向けた検討,を課題として挙げております.

 第10回アジア作物学会議(ACSAC10)は,2020年8月31日(月)から9月3日(木)に名古屋国際会議場で開催予定であり,山内章運営委員長の下で準備が進んでおります(http://acsac10.org/index.html).本会議は,アジアを中心とした多くの作物研究の成果が一堂に会する場であり,世界の研究者と交流して共同研究などの成果発信と共に新たなシーズを育てることのできる場と思います.今回は日本で開催されることでもあり,会員の皆様には特に積極的なご参加をお願い申し上げたく思います.加えて,本年秋に開催予定の第250回講演会は,ACSAC10に引き続き同じ場所で開催されますので,合わせて是非ご参加をお願い致します.また,春と秋の講演会のあり方について前期から検討を続けておりますが,第251回につきましては,近畿支部会の京都大学で行われることが決まっています.春の講演会を関東以外で行うのは,初めての取り組みです.よりよい講演会のあり方を今後とも模索していきますので,ご意見等をお寄せいただければと思います.

 学会誌ですが,日本作物学会紀事の論文掲載数は少しずつ増加しており,第87巻4号で掲載論文数が非常に少なくなりましたが,第89巻におきましては回復してきています.これは投稿数が増加傾向にあるためで,ひとえに会員の皆様と編集委員会のご尽力による結果であり,深謝申し上げます.また,速報に関する規則を変更して審査方法を整備し,速報の定着がさらに進んでいます.今後とも和文誌が会員の皆様の情報交換と発信の場として活発に利用されることを目指します.また,英文誌PPS(Plant Production Science)は,特集を組むなど編集委員会のご尽力があり,加えて会員の皆様のご支援により投稿が増加しています.さらに,海外からの投稿数が全投稿数の6割を超え,IFも1.23を記録しており,国際誌としての認識を新たにしています.2017年から5年間の「国際情報発信」科学研究費もあと2年となりました.今期は科学研究費の申請を目途として,さらなるPPSの発展について検討をしていく必要があります.皆様のご意見を広く取り入れてまいりたいと思います.

 本学会の財政につきましては,単年度収支の赤字財政を立て直すことを目指して,検討を重ねて来ましたが万策尽きた状況で,2020年度より会費の値上げをお願い致しました.これによって本会の会計が改善することを切に願っておりますが,まだ予断を許さない状況です.財政の安定化を目指して,講演会参加費や英文誌投稿料のあり方の検討を継続致します.今後とも効率的な会の運営を目指してまいりますので,会員の方々にはご理解のほどよろしくお願い申し上げると共に,ご意見やアイデアなどご教示いただきますようお願い申し上げます.また,本会の活動を基本にした一般市民向けの情報発信として,出版物の刊行やシンポジウムの開催が挙げられますが,出版物の刊行は本会の収入にも結びつくことから強化していきたいと考えています.現在,新田洋司出版部長を中心に具体案が作られており,近いうちにご報告できると思います.シンポジウムにつきましては,2021年の開催に向けてシンポジウム委員会を中心に検討していただき,「研究成果公開発表」科学研究費の申請を予定しています.

 若手・女性研究者の活動が活発であることは,作物学会にとってとても喜ばしいことと思います.今後ともACSAC10における若手研究者フォーラムを始め,講演会での小集会や優秀発表賞の選考など引き続き積極的に支援していく所存です.海外学会出席助成につきましても,財務基盤がやや不安定ではありますが,確保して継続できるように致します.

 最後に,作物学と作物学会の将来について,検討が必要と認識しています.比較的近い,数年後ぐらいを目指した検討と,もう少し長期の将来を目途とした検討が必要と思います.これまで2018年3月に出された将来構想検討ワーキンググループからのご提言に基づいて数年後の作物学会に関しては検討・実施されてきました.まだ継続している問題については今後も引き続き注視・検討をしていきたいと思います.加えて,組織としての作物学会については将来的な法人化について考えていく必要を認識しています.社会的な信用を得るためには重要ですが,変更は容易ではありませんので,将来に向けて再度検討を始める必要があると考えています.また,前期には白岩立彦前会長を中心に30年ぐらい先の将来の作物学と作物学会において今後重要となるであろう研究課題について執行部の中で討論してきました.今後も機会を見て議論の場を広げていきたいと思っています.微力ながら,作物学の発展と若手研究者の育成に尽力してまいりますので,ご指導とご協力をたまわりたくよろしくお願い申し上げます.