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日本作物学会の会員の皆様へ

会長 齊藤 邦行
(岡山大学大学院環境生命科学研究科)

 2015年の年頭にあたり,会員の皆様に,新年のご挨拶を申し上げます.会長に就任して10ヵ月が過ぎました.7月にお知らせして以降の,本会活動の概要を述べさせて頂きたいと思います.
 7月13日(日)に第1回幹事会,9月8日(月)に第2回評議員会が開催されました.本会の会計状況が非常に厳しいことは前回お知らせしましたが,執行部,各種委員会に経費節減をお願いしたところ,赤字が400万円程度に縮小される見込みです.特に支部補助金を緊急的に中止したことをお詫びするとともに,支部講演会への執行部参加も自己資金で行うこととしました(東北,北陸,九州支部には参加できませんでした).和文誌編集委員長から,依頼していました掲載料徴収については,これに伴う投稿数の減少を考慮すると難しいとのこと,講演要旨がレターサイズ1ページに変更になり,名称は日本作物学会第xxx回講演会要旨集(Abstracts of the xxx Meeting of the CSSJ)に変更し,これまで通りオンライン公開されること等が,説明されました.英文誌編集委員長からは,海外からの投稿数減少が危惧されるので,和文誌と同様に掲載料の徴収は見送ること,PPSのインパクトファクター(2013)が0.92であること,PPSの出版を外部委託(冊子体廃止も含め)することを検討していることが報告されました.執行部としては実効ある増収対策として投稿料の復活をお願いしていましたが,両編集委員長の意見を踏まえ,しばらくの間,会計の状況を見守ることとしました.評議員会では,冊子体を廃止して完全オンラインジャーナル化することにつき,執行部に一任して頂くこととし,PPS編集委員会を中心に,この方向で2015年度の国際情報発信強化の科研費申請を行うとともに,それに向けた会則改定,入札手続きの変更等を進めることになりました.学会賞選考委員会では,学会賞1件,奨励賞2件,技術賞3件,和文誌・英文誌論文賞各3件が決定し,すでにホームページに公開されています.
 評議員会翌日(9月9,10日)の第237回講演会では,講演要旨の1ページ化に伴い,要旨集が厚さ7mm程度になり,表紙の色,デザインとも一新されました.また,学生発表者の学年,PD,就活中か否かの表記を要旨集に加えました.問題があればお知らせ下さい.韓国作物学会との相互交流が行われる予定でしたが,韓国のお盆と重なったため,今回は1件のみポスター発表となりました.優秀発表賞(口頭・ポスター)各5名が決定して,ホームページに掲載されています.シンポジウム2では,130名の参加者を得て,四国の麦(小麦・はだか麦)の生産・加工そして食文化につなげる講演と議論が交わされ,作物学の広がりを感じさせるものでした.エクスカーションは稲・麦・大豆(各15ha)の栽培と豆腐の6次化に取り組む法人経営と稲・麦・大豆にソバ,野菜栽培を導入した集落営農(22ha)の見学と,内子町町並み保存地区の散策と盛りだくさんでした.
 第8回アジア作物学会議(ACSAC8)が9月23~25日に,「Sustainable Crop Production in Respond to Global Climate Change and Food Security」を主課題として,ベトナム国家農業大学(前ハノイ農業大学)で開催され,180名(日本80名,韓国16名,ベトナム64名)の参加があり,本会若手研究者海外学会出席助成を受けた6名も参加しました.組織委員会はDr. Cuong氏を中心に,日本3名,韓国1名のメンバーが加わり,特に海外交流推進委員会(委員長坂上氏)は,韓国作物学会との特別セッションの企画,プログラムの構成から招待者の選考,スポンサー斡旋まで,主導的にACSAC8の運営に貢献しました.また,若手・男女共同参画ワーキンググループの本間座長の企画で,若手研究者の国際交流を目的として自己紹介を1分間パワーポイントで行う企画も開催されました.ビジネスミーティングでは,ACSACの会長がDr. Cuong氏,事務局長が坂上氏に決まり,ACSAC9は2017年にDr. Woo氏を委員長として韓国で開催されることになりました.現在,韓国で組織委員会が立ち上がり,ACSAC9は2017年6月7~9日に,韓国済州島で開催される予定です.
 さて,2008年11月に締結しました中国作物学会と日本作物学会との学術交流協定が2013年11月に,延長されました.その関係もあったのか,去る2014年10月29~31日に,江蘇省南京市南京会議中心で開催された中国作物学会学術大会に私が招待され,基調講演を依頼されました.この会議には,天津農業大学の崔氏と共同研究を行っている,松江氏,楠谷氏ほか合計4名の日本人研究者が参加して,講演発表を行いました.参加者は1600人で,バイオテクノロジー,遺伝資源・遺伝育種,栽培の3会場に分かれて,その分野の先端的研究者により研究発表が行われ,発表数は80課題程度と,優れた研究のみが発表されているようです.17:30~21:00には,大学院生による発表が同様な3会場に分かれて行われていました.イネについては,多収から環境保全,高品質・良食味に栽培方法,育種がシフトし始めているように感じました.また,中国ではトウモロコシ・小麦の需要が逼迫して,価格は年々上昇しており,ダイズ栽培をトウモロコシに転換しても,輸入量が増加しているとのことでした.中国では5大作物のみならず,ナタネ,ワタ,サトウキビ,サツマイモ,ラッカセイなどの研究も精力的に行われていました.特に,英語による発表もいくつか見られ,2016年に北京で開催される第7回国際作物学会議を見据えて,国際化を進めていると感じました.今後,韓国に加えて,中国作物学会との学術交流を進めるため,2015年秋の講演会では,中国作物学会長に招待講演をお願いしたいと考えています.
 本年,不採択に終わった科研費2件の内,研究成果公開発表(B)シンポジウム助成については,シンポジウム委員会と第240回講演会開催校(信州大学)の萩原氏とで綿密に調整いただき,『「米」になるイネ,ならないイネ-雑草イネの来た道と今後,研究先進地長野県からの最新情報-』というテーマで70万円申請いただきました.このシンポジウムは雑草学会との共催で行われます.また,国際情報発信強化(B)PPS助成については,執行部と綿密に打合せつつ,『アジア地域における作物研究のトップジャーナルPlant Production Scienceを目指して』という取組名で,2015年度366万円,5年間計1810万円の申請をしていただきました.本年,4月には必ず採択されると信じて,会務の運営に尽力したいと思います.
 今年は,英文誌の完全オンラインジャーナル化に向けて,会則改定,入札手続きの変更等を,PPS編集委員会と綿密に打合せをしながら,間違いなく進めて参ります.また,韓国,中国ともに相互に講演会に参加して研究発表を行う機会を作り,特に若手研究者の国際交流を進め,2016年の第7回国際作物学会議(北京),2017年の第9回アジア作物学会議(済州島)に向けて,日中韓3ヵ国の協力態勢を確立したいと思います.本会が,会員皆様の作物学研究の発展と,交流を進める場として,ますます機能できますように,ご意見を積極的にお寄せいただくとともに,ご支援,ご協力を重ねてお願いいたします.