日中作物学会の学術交流の新たな時代へ
―両学会学術交流協定の締結―
会長 大杉 立
(東京大学大学院農学生命科学研究科)
去る2008年11月8日,中国福建省福州市福建農林大学で開催された中国作物学会学術大会において,日本作物学会と中国作物学会の学術交流協定書の調印がなされました.日本側からは大杉会長が,中国側からは路明会長他関係者が出席しました.
両学会の学術交流については,2003年の路明会長の日本訪問を皮切りにまず情報交換が行われ,その後会長の相互訪問,関連シンポジウムへの研究者の出席などが続きました.2007年3月茨城大で開催された日本作物学会講演会に路明会長以下の中国代表団が出席された際に,両学会の学術交流に関する協定書の作成が合意され,その後文案の検討を経て今回の調印に至りました.
本協定の内容は,(1)学術情報,材料および出版物の交換,(2)相手側学会講演会への学会員の相互参加,(3)合同セミナー及びシンポジウムの実施,(4)共同研究の企画等です.調印式では,中国側から①両学会として大規模かつレベルの高い交流を目指したい,②合同シンポジウムなどを定期的に開催したい,③若手研究者の相互訪問を活発にしたい等の要望が出され,日本側としてもその方向で異存はない旨を大杉会長から表明しました.
今回の協定書の調印により,両学会の交流は新たな時代に入ったと言えます.中国側からの要望にもあるように,より具体的な交流の促進が今後の課題であり日本側も積極的な対応をしていく必要があります.既に,執行部,国際交流委員会,シンポジウム委員会等において対応を検討しており,例えば,来年3月につくばで開催される日本作物学会と日本育種学会の合同講演会において,日中交流協定締結記念シンポジウムを開催することにしています.また,若手研究者の相互交流の促進も重要です.今回の中国作物学会学術大会では,イネの多収に関するQTL解析,油用トウモロコシ品種の育成,在来農法の再評価など興味深い講演があり,日本の若手研究者にとって中国での作物研究の最新情報を得ることは今後の研究展開に大きなプラスになると考えます.交流資金の獲得も含めて検討を始めたところです.
わが国の農業及び東アジアの農業の今後の展開を考えるときに,作物研究に関する両学会の交流促進は大変重要です.また,今後は両学会に韓国作物学会等を加えた東アジア作物学会間の交流促進を図る必要があると考えています.