日本作物学会の会員の皆様へ
会長 大杉 立
(東京大学大学院農学生命科学研究科)
平成20年4月から2年間,会長を務めさせていただくことになりました.もとより微力ではありますが,会員皆様のご支援のもとに学会の活性化などに努力したいと考えております.前回の会長選挙から立候補制となり,私はいくつかの公約を掲げて立候補し,信任していただきました.これらの公約について,もう少し詳しく述べることで私の着任の挨拶とさせていただきます.
(1)英文誌,和文誌の充実
学会誌は講演会と並んで学会活動の中心であり,その充実にはこれまでも執行部,和文誌編集委員会,英文誌編集委員会を中心に取り組んできました.前執行部において,英文誌と和文誌の投稿料を無料とし,英文誌については超過ページ料金を7ページからにすることにしました.英文誌については,インパクトファクターを1まで高めることを目標にしてレビュー掲載数の増加,審査時間の一層の短縮による投稿数の増加などを目指します.既に,英文誌編集委員会(井上眞理委員長)ではレビュー担当委員3名を任命して企画を始めております.和文誌については,支部会報などに掲載されている優れた研究成果を掘り起こして掲載することをこれまで以上に進めていきたいと考えています.また,英文誌と同様に審査時間の短縮にも取り組みます.
(2)関連学会・支部会との連携強化等による講演会の充実
講演会は研究成果の発表の場であり,会員相互の交流の場であります.しかし,近年の各学問分野での研究の進展・深化は著しいものがあり,他分野の研究知見との相互乗り入れをすることは作物学会の更なる発展にとって重要です.作物学会も既に育種学会との合同シンポジウム(北海道,アジア作物学会議(タイ),国際作物学会議(韓国)),園芸学会,日本応用動物昆虫学会,農業農村工学会との合同シンポジウムなどを開催してきました.本年度秋の講演会(神戸大学)では,雑草学会との共同シンポが予定されております.また,来年春の講演会は育種学会との合同開催の方向で準備が進められています.これらの合同企画の成功を目指すとともに,新たな合同企画の検討を開始します.また,支部会との連携強化はこれまでも取り組んできましたが,支部会での特徴的なテーマについて本会講演会でのセミナー・シンポジウムの開催を考えたいと思います.
(3)情報発信活動の強化
作物学会は会員相互の親睦を深めることが大きな目的ですが,作物学会で蓄積された成果・情報を広く発信することも重要な活動です.これまでは必ずしも十分な取り組みがなされてこなかったように思いますが,新たに広報委員会を設置して,学会の活動・成果などをわかりやすく発信するような企画を立てるとともに,ホームページの充実を図ります.また,農業者・市民との交流の場(講座など)を設けることも考えたいと思います.
(4)海外交流の促進
アジア諸国の作物学研究者との交流はこれまでも積極的に進められてきました.特に,中国作物学会とは会長の相互訪問,合同セミナーの開催などが行われました.他のアジア諸国の研究者も含めた交流を引き続き活発に行っていきます.また,本年4月に韓国で開催される第5回国際作物学会議には既に多くの本会員が出席予定であり,学会としても積極的に参画していく所存です.
また,これらの課題と重なる部分もありますが,学会員数の増加,若手研究者の育成,男女共同参画の学会活動などにも取り組んでいきたいと考えております.これらの課題に取り組むなかで恐らく,作物学会はどこに行こうとしているのか,どこに行くべきなのか,といった本質的な問題にも一定の回答を出さなければならなくなると予想しております.将来構想を検討するワーキンググループを中心に考え,皆様とも議論したいと思います.2年の任期でどこまで実現できるか不安もありますが,会員皆さんのご支援・ご協力をよろしくお願い致します.