日本作物学会の会員の皆様へ
会長 国分牧衛
(東北大学大学院農学研究科)
昨年の春以降,執行部が取り組んできた課題のうち,以下の3点について,現在までの取組み状況をお知らせいたします.
1.学会誌の著者負担金の改定
学会誌(日作紀,PPS)掲載論文の著者負担経費(投稿料10,000円,超過頁代5ページ以上15,000円/ページ,英文校閲代など)は多額であり,投稿を躊躇する要因になっています.今後,海外を含め投稿の促進を図るためには,著者負担額の軽減が急務と考え,対策を検討してきました.その結果,下記の改定案をまとめ,さる3月の評議員会および総会にお諮りして承認していただきました.
改定案:PPSの投稿料を無料とし,Regular paperの超過ページ料を7ページ以降(現行は5ページ以降)とする.Review, short paperは現行通りとする.また日作紀掲載論文の著者負担額については当面現行通りとし,両誌への投稿数および会計の推移等をみたうえで,できるだけ早い機会に軽減策を検討する.
この改定案の背景としては,PPSの著者負担額が多いため,投稿数拡大(特に海外から)の大きな障壁となっていること,近隣の作物学関連の国際誌と比べても投稿料等が高いことなどがあります.この軽減策により減収額は200万円程度となりますが,この金額は科研費公開促進費の収入が例年通りであれば,単年度収支が赤字にならずに済む額と判断いたしました.今回の改定により,著者負担金の軽減による投稿数の増加(特に外国からの)が期待できます.また,アジアにおける第1級の作物関係Journalとしての確固たる地位を維持・発展させることが期待できると思っております.
一方,今回の改訂がPPSのみに限定したことに対し,日作紀への投稿数減少が懸念されるので,軽減策は両誌を分けずに同時に行うべきであるとのご意見がありました.日作紀についても,両誌の投稿数や会計の推移をみたうえで,早急に軽減策を検討する予定です.
2.若手支援策の実施
いかなる学会も,若手メンバーの活性がなくては将来の学会の発展は期待できないと思います.学会としての若手会員の支援策については,前期執行部時代,松田前副会長から基本的な方向を提案していただいておりました.その提案を基に,今期は,若手育成ワーキンググループ(齋藤邦行座長)を組織し,種々の課題について検討をお願いしております.具体策がまとまったものから順次実施に移すこととしておりますが,その1つとして若手会員の海外学会出席経費の助成を開始することにいたしました.助成対象者は37歳未満の会員で,1件10万円以内との条件があります.詳細と申請用紙はHPに掲載しております.
今年は11月にはアジア作物学会(タイ),来年4月には国際作物学会議(韓国)が開催されます.前者はすでに申請を締め切りましたが,後者につきましても多数の方々に応募頂き,本制度を活用して海外の研究者との交流を深めていただきたいと思います.
3.アジアの関連学会との交流発展を目指して
日本作物学会の国際交流活動は,本会の諸先輩が中心的な役割を果たして創設されたアジア作物学会議を通じ,継続的に行われております.アジア作物学会議は,第1回が韓国・ソウル市で1992年に開催された以降,福井市(1995年),台湾・台中市(1998年),フィリッピン・マニラ市(2001年),オーストラリア・ブリズベーン市(2004年)と継続され,第6回目は本年11月にタイ・バンコック市で開催されます.これらの国際会議には,海外交流推進委員会(近藤始彦委員長)が中心になって対応を検討しており,今年のアジア作物学会議では,育種学会との共同シンポジウム「ゲノム情報の活用によるイネ収量向上の可能性」を実施することになりました.また,第5回世界作物学会議は,来年(2008年)4月,韓国の済州島で開催されますが,この会議でも作物学会は育種学会との共催によりシンポジウムを開催する準備を進めております.いずれの会議にも,日本から多数参加され,皆様の研究成果をアピールしていただくとともに,アジア諸国の方々との交流を深めていただきたいと思います.
これらの多国間交流と並んで,2国間の交流も進んでおります.特に,中国作物学会とは,今井元会長時代から定期化され,相互の年次大会に歴代の会長が招待され参加しております.今年3月には路明理事長(会長に相当)他8人の中国代表団が茨城大会に参加され,今後の交流の枠組みについて両学会執行部間で協議いたしました.その結果,これまでの学会代表の相互訪問から,共同セミナーの開催や共同研究と交流の実を深めること,これらの枠組みを協定書として取り交わすことが合意されました.また,台湾や韓国との間でも,2国間交流を今後一層深めていきたいと思います.