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日本作物学会の会員の皆様へ

会長 国分牧衛
(東北大学大学院農学研究科)

 4月から2年間,会長を務めさせて頂くことになりました.もとより浅学菲才でありますが,会員の皆様の英知と執行部の力を集め任務を果す覚悟です.以下,今期取り組むべき重要課題について述べてみたいと思います.

1.学会誌と講演会の充実
 作物学会は,1927年に設立後,80年近くの歩みを刻んできました.この間,会員の皆様の研究成果は,作物学ひいては農業技術の発展に大きく寄与してきました.設立以来,学会員の主要な活動の場は,学会誌であり,講演会であります.学会誌と講演会の有り様は学会活動のバロメーターであり,この両者の充実については不断の努力が重要と思っております.
 幸い,歴代の編集委員会のご尽力により,和文誌,英文誌(PPS)ともに順調に発行が続いていますが,さらに充実したものにするため,和文誌では地域に埋もれている貴重な研究成果を発掘・掲載する仕組みを再検討し,英文誌では優れた総説を企画する体制を整えたいと考えます.
 講演会は,いうまでもなく会員の研究成果の発表の場ですが,加えて,特に若い研究者の学ぶ場・交流の場としてより魅力的なものにしたいと考えます.そのための具体的なアイデアを募集し,実行に移したいと思います.

2.国内関連学会との協調
 作物学は総合の学であり,その研究実施には,育種学,土壌肥料学などの農学諸分野の知見や,形態学,植物生理学など基礎的分野の知見・手法も必要です.したがって,関連する諸学会との共同シンポジウムなどによる意見交換は益するところが大きいと考えています.これまでも,2002年の講演会(北海道)では育種学会との共同シンポジウムが開催されています.また,本会主催のシンポジウムでは関連学会からの講演者も招聘しています.今後も,テーマに対応して,学会の壁を低くして,積極的に他学会との相互乗り入れを活発にしていきたいと考えます.

3.アジア諸国の関連学会との協力
 わが国の自然・社会環境や作物栽培の歴史は,中国,台湾,韓国などの東アジア隣国と共通点を多く持っています.したがって,これらの諸国との研究交流は相互に利するところが大きいと思います.前期においても,2004年つくばで開催された世界イネ研究会議でワークショップを企画し,これらの国々の研究者を招聘して共通の研究課題に対する意見交換を行いました.また,シンポジウム委員会や海外交流推進委員会のご努力により,海外の研究者を加えたシンポジウム・ワークショップを実施しております.さらに,森田前会長はその任期中に中国や韓国の関連学会に参加し,講演しております.PPSの編集委員会には中国や韓国の研究者に参画してもらっておりますし,韓国作物学会誌の編集委員会には私もメンバーになっております.2007年にはタイでアジア作物学会,2008年には韓国で国際作物学会議の開催が予定されていますので,当該国の運営委員会と協力しながら日本作物学会としては積極的に参画していきたいと思います.これまでのこのような活動を継続し,周辺諸国との協力関係をさらに強固なものにしたいと思います.

4.支部との連携
 作物学会には全国に9つの支部があります.各支部はそれぞれ独立した会則と会員からなり,独自の会計を持っています.支部会員ではあるが本会の会員ではない方が少なからずおられます.したがって,名称は作物学会支部とはいうものの,実態はかなり独立した組織として運営されています.このような支部会と本会の連携をいかに強化するかは,かねてから課題とされてきましたが,具体的な取り組みは十分ではありませんでした.森田前会長は任期中にすべての支部会を訪問され,交流を深めて来られました.今後は,このような実態と経緯を踏まえ,具体的な連携・協力のあり方を探っていきたいと考えています.

5.若手研究者の支援
 団塊の世代が第一線から退く時期を迎えており,学会活動においても若い研究者の活躍に期待するところが大きくなっています.執行部や評議員の年齢構成は会員の年齢構成よりも高齢化していますので,若手層の意見を学会活動に積極的に反映させうる体制を整備していく必要があると考えています.幸い,評議員の一部を会長判断で追加指名できることになりましたので,この制度を活用し,若手のアイデアや意見を学会の運営に反映させていきたいと考えております.また,前期の活動の中で,松田副会長を中心に「若手研究者支援システム」を検討して頂き,国際研究集会派遣への援助などの支援策を提案して頂きましたので,その具体化に取組みたいと考えております.

6.その他の課題
 森田前会長の任期最後の挨拶(日作紀1月号)には,前期の活動の総括とともに以下の事項が今後の課題として提示されています.
 1) 会則の改定
 2) 学会の将来構想
 3) 社会的発信
 4) 特別会計の有効利用
 5) 本会と支部
 6) 他の組織との連携
 これらの諸課題については,前期会長の諮問機関として設置された「学会戦略WG」(丸山幸夫座長)において現状分析を行い,学会の抱える問題点と将来方向を整理・提案して頂きました.提案頂いた主要な事項については,執行部一丸となって,また必要であればWGを組織し,皆様のご意見を伺いながら具体的な取組みを進めていきます.会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします.