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日本作物学会の会員の皆様へ

会長 森田茂紀
(東京大学大学院)

 2004-2005年度の会長として選出して頂きましたので,よろしくお願い申し上げます.今年度の総会はすでに3月末に玉川大学で開催されましたが,それ以降の約1ヶ月間における活動のご報告も含めながら,2年間の体制や方針などについてご説明させて頂きます.

1.作物学を取り巻く状況
 河合塾が「わかる!学問 環境・バイオの最前線-大学・研究者ランキング」という本を,2003年末に角川書店から出しました.その中に作物学も取り上げられているのですが,「学問的活性度」は5段階評価で2点,「社会的要請度」は同じく3点となっています.もちろん,このような点数に一喜一憂する必要はありませんが,外から作物学をみた場合の評価としてこのようなこともあることは,他の分野との比較を含めて,頭の隅に置いておいてもいいことだと思います.すなわち,実状や展望は決してこのようなものではないと思いますし,そうあってはならないわけで,そのためには研究をさらに精力的に進めながら,その成果を社会に対しても積極的に発信していく必要があります.反対にそれを怠れば,学問分野の地盤沈下が進んでしまいます.この2年間でできることは多くないでしょうが,皆様のご協力を得て作物学会と作物学界の発展のために努力していきたいと考えております.

2.学会構造と今期の体制
 今期の体制につきましては,総会の直後に一部をご紹介させて頂きましたが,ようやく,すべての委員会メンバーと幹事が決まりました.詳細につきましては,本号の該当ページをご覧下さい.なお,私は,日本作物学会の全体構造の概略を図のように考えております.もちろん,副会長や評議員が各種委員会のメンバーを兼ねている場合があり,細かい点では必ずしも正確に表現できていないところもありますし,異なるお考えの方もいらっしゃるでしょうが,このように整理すると理解しやすいと思います.
 これまで,最高議決機関としての総会,審議機関としての評議員会,執行機関としての幹事会という位置付けがされてきたと考えております.それぞれを構成するメンバーにつきましては図に示したように理解しておりますが,学会全体の活動に重要な意味を持っている支部会につきましては,さらに明確な位置付けができればと考えております.

3.会長・副会長の会務分担
 会長は学会を代表して,すべての会務について最終的な責任を持たなければなりませんが,会務の遂行を効率的に進めるために国分牧衛および松田智明の両副会長に以下のように分担して,重要事項の進捗状況の確認をお願いすることに致しました.すなわち,

・国分副会長PPS関係・シンポジウム委員会関係・海外交流委員会関係・情報ネットワーク化委員会関係・学会戦略WG関係・アイソトープ担当幹事関係
・松田副会長日作紀関係・学会賞委員会関係・用語委員会関係・レビュー委員会関係・日本農学会関係・講演会関係・支部会関係

という分担で進めさせて頂きます.ただし,執行部・事務局・委員会などの間で緊密に連絡を取り合い,情報を共有化していく必要があることはいうまでもありません.

4.2年後の退任時の状況
 2年後には,以下のような状況を作りだして退任したいと考えております.すなわち,
  ・将来構想・学会戦略の策定
  ・計画実施のための体制の確立
  ・新選挙制度による執行部の選出
という3点を実現して,次期の執行部に引き継ぐことが目標です.将来構想・学会戦略については,会長の諮問機関として学会戦略WG(仮称)を設置し,丸山幸夫会員にとりまとめをお願いしました.何を議論するか自体をまず議論して頂くことになりますが,(1)作物学・栽培学の新しい発展,(2)次世代を担う若手研究者の育成,(3)研究成果等の対外的発信の強化,(4)関係諸機関団体との連携の強化,をどう進めて行くかについて議論を行い,具体的な提案をして頂きたいと考えています.この作業が時間切れにならないように,秋の講演会前日に評議員会を開いてご審議頂く予定で,それにむけて幹事会での準備などを進めていくつもりです.

5.始めていきたいこと
 学会戦略WGで議論を進めて頂いたり,また評議員会で審議を進めて頂くのと同時並行的に,各種委員会・幹事の分担する会務の中でできることはすぐに進め,議論の必要があるところは議論を始めて頂くつもりです.すでにあげた項目と重複するところもありますが,体制の明確化と情報の共有化,学会HPのさらなる充実,日作紀・HPにおいて委員会・支部による四半期ごとの報告,日作紀・PPSの改善の継続,講演会の持ち方の工夫,シンポジウムのさらなる充実,出版関係の企画,会則・規約などの点検と見直し,会長・評議員選挙の改革,海外関係の見直しと強化,支部会会員の位置付けの明確化,などが頭に浮かびます.これまでに進んでいることとしては,国際コメ年にあたり筑波で開催される世界イネ研究会議を作物学会として後援すること,この会議で作物学会としてワークショップを開催するための企画が進んでいることがあげられます.
 今期は,事務局(庶務・会計),日作紀編集委員会,PPS編集委員会を始めとする執行部役員がほぼすべて新しく交代しましたし,庶務・会計を中心とする会務の負担を軽減するために事務取扱所である共立印刷にお願いする事項が大きく増えることになりました.こういう状況下では「何も起こらない」ということ自体が重要なことでありますが,少し欲ばって上記のような項目について,手を着けられるところから始めていきたいと考えております.会員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げる次第であります.