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日本作物学会会員の皆様へ

会長 本間香貴
(東北大学大学院農学研究科)

 この度2026年4月から2年間,一般社団法人日本作物学会の会長(代表理事)を拝命いたしました.いよいよ2027年には100周年を迎える節目の時に会長を務めるのは非常に光栄なことと考えています.これまでの歴史を引き継ぎさらに今後に伝えていくことが重要な役目と心得ているつもりです.推薦を頂きました先生方,信任をいただきました代議員の皆様に御礼申し上げます.
 大川前会長には一般社団法人への移行に尽力していただき,昨年7月には“令和の米騒動”に対して緊急声明の発表を行うなど学会の社会的な存在意義を示してきていただきました.「この法人は,作物科学に関する研究の推進と成果の発信により,作物科学の発展および作物生産技術の普及への貢献を目的とする.」と定まっており,目的の達成のための学会の事業として,「(1)講演会,シンポジウム,その他研究会等の開催,(2)日本作物学会紀事(和文誌),Plant Production Science(英文誌)及びその他出版物の発行,(3)学会賞等の授与,(4)地方活動及び地方談話会の支援,(5)研究成果に基づく社会への提言,(6)内外の関連学会,関連団体との協力,国際交流の推進,(7)その他この法人の目的を達成するために必要な事業」が示されています.会員の皆様,各地方区から選出された代議員の皆様とともに,副会長,各種委員会委員,幹事と力をあわせ,法人設立の際に示された目的をたっせいするために本会運営に尽力していく所存ですので,ご協力のほどよろしくお願いいたします.
 言うまでもないことですが,日本作物学会は食を中心に衣や住にも関わる作物を研究対象としており,世界的には人口増加や気候変動,生産持続性など,国内では食料安全保障や温暖化,農業従事者の減少・高齢化などが大きな課題となっています.こうした問題は近年ますます複雑化しつつあり,一学会での対応は非常に荷が重い状況となっています.したがってこれまで以上に,他の学問分野と人的交流,連携を深め,これらの問題に立ち向かい,解決のための研究の推進と技術開発,普及に貢献するため,法人としての社会貢献活動を推進していきたいと思います.
 新執行部では100周年事業を実施し,学会活動を盛り上げていくことが第一の課題と考えております.また,100周年で失速することが無いように,今後の活動を見据えた改革の実施も責務と考えているところです.前執行部における将来ビジョンおよび財政検討の両ワーキンググループからの答申を参考に,必要な改革を進めていきたいと思います.以上のことを考え,青木直大副会長(理事),新田洋司副会長(理事),庶務幹事,会計幹事,各種委員会とともに,以下の取り組みを進めて参ります.皆様のご協力をよろしくお願いいたします.
(1)講演会,シンポジウム,その他研究会等の開催促進
 講演会など多数の方々と交流し合う機会の提供は,学会活動の中心と考えています.魅力ある講演会の実施を「シンポジウム委員会」や「講演会企画委員会」とともに取り組んでいきたいと思います.また,既に講演会要旨集のPDF化が実施されましたが,参加費を抑え手続きを減らし,参加しやすい講演会に変えていくことも重要と考えています.既にオンラインでの要旨作成システムの導入について検討を開始しており,ワーキンググループを立ち上げて実施に向けた調整を進めたいと考えています.
(2)日本作物学会紀事,Plant Production Scienceの充実と発信力強化
 和文誌である「日本作物学会紀事」と英文誌の「Plant Production Science」の出版は,私たちの活動の成果を後世に伝える責務を担っています.その存在意義を高めるためには,良質な論文を出版するだけでなく,総説やReview論文,特集号などの企画も重要と考えています.現在100周年に合わせた仮想特集号(Virtual Issue)の募集を行っていますが,それを契機により一層の充実を進めるべく,「和文誌編集委員会」と「英文誌編集委員会」を中心に検討を進めていきたいと考えています.
(3)国際交流の促進
 本会では世界やアジアでの食料生産,持続的農業.気候変動対策などに関わる研究成果の議論,国際交流の場として,国際作物学会議,アジア作物学会議(ACSA)のメンバーとして活動しています.2025年5月19-22日にACSAC11が台湾の台北で開催され,ACSAC12はフィリピンで2029年に開催予定です.ACSA事務局が日本に設置されたこともあり,活動支援を継続していきたいと考えています.また2026年3月の第261回講演会では,韓国作物学会および台湾農芸学会からのお客様を迎えることになっています.今後も「海外交流推進委員会」を中心に,今後もさらなる国際交流の活性化に向けて取り組んでいきます.
(4)地域談話会等との連携強化
 現在各地方に地域談話会が形成され,地域の農業,現場の作物生産など実践的な研究に関わる情報交換が行われています.今後も談話会の活動を支援し,作物学会全体の発展に結びつくように連携を強化していきたいと思います.
(5)ダイバシティの推進
 前執行部により「ダイバシティ推進委員会」が設置され,世代,性別,国籍,専門の学問分野,職位,生産者,研究者などさまざまな壁を超えた交流の促進を行っています.講演会時の託児所サポートを始め,参加しやすい学会を作っていきたいと思います.学会で多様な研究者が活躍し,さまざまな意味での異分野の方との交流人口を増やし,また入会される方を増やしていくための方策を検討してもらう予定です.
(6)法人の広報・社会貢献活動の促進
 学会ホームページ(https://cropscience.jp/)では会員だけでなく一般の方への情報提供,講演会,シンポジウム,学会誌,地域談話会などの情報発信を行っています.「広報・社会貢献委員会」には引き続きホームページの管理・運営や企画を担当してもらいます.また講演会時のアウトリーチ活動等にも積極的に取り組んでもらう予定です.
 「出版部」からは「農作物のふしぎ」が刊行されました.「作物栽培体系」も5巻が刊行され,残り3巻についても刊行を模索しているところです.引き続き会員の皆さんや一般の方に役立つような出版を企画していきたいと思います.
(7)2027年の設立100周年記念事業に向けた取り組み
 「総合的な学術である農学において,その主要な要素である作物学分野の進歩のために,同好の士が集う組織を設立したものである.」の設立趣旨として,1927年4月8日に「日本作物学会」が設立され,2027年に100周年を迎えます.記念式典を実施するほか,同じく100周年を迎える日本土壌肥料学会との記念合同シンポジウムを企画しています.また,日本作物学会紀事とPlant Production Scienceとの協力のもと,レビュー集の企画を進めています.「100周年記念事業実施委員会」を中心に企画および実施を行っていく体制となっています.

2026年4月