日本作物学会の会員の皆様へ
会長 森田茂紀
(東京大学大学院)
この号がお手元に届くのは,評議員会・総会および第219回講演会を目前に控えたころになると思います.まだ会長就任から1年は過ぎておりませんが,評議員会および総会でのご報告やご提案とも関連して,これまでの出来事などについて,主要な点を以下に簡単に整理させて頂きます.前号までと重複する部分があることを,お許し下さい.
1.情報の公開と共有化
昨年の4月以降,会長として把握している学会の毎月の動きを整理して,翌月の上旬に役員の皆様へ電子メールでご報告しています.ただし,すべての会員の皆様へ同じものをお送りするのは煩雑すぎると考え,会員の皆様には3ヶ月ごとに整理した内容や,各委員会・幹事および支部からご報告頂いた内容を,日作紀の「学会からのお知らせとお願い」と「会務報告」に掲載しております.また,学会のHPをさらに充実したものにするべく,情報ネットワーク化委員会に改善やデータの更新をお願いしております.なお,第219回講演会からは,講演会のHPの設営と管理も,同委員会に担当して頂くことになりました.
2.日作紀・PPS関係
日作紀に掲載された論文および総説はpdfファイルを作成し,JASI(農水省関係のデータベース)を通してインターネット上で公開を行うことにしました.また,日作紀(http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcs/-char/ja/)は第72巻1号(2003年)から第73巻3号(2004年)まで,PPS(http://www.jstage.jst.go.jp/browse/pps/)は第6巻1号(2003年)から第7巻3号(2004年)までが,J-stage を利用したオンラインジャーナル公開も始まりました.さらに,将来的にはオンラインでの論文投稿・審査システムを導入することなども視野に入れて,情報収集を続けています.なお,支部会報も含めて電子図書館に協力することになり,情報ネットワーク化委員会に担当して頂いております.
昨年9月にオーストラリアで開催されました第4回国際作物学会議では,PPSの宣伝チラシを配布しました.同時に同じ会場で開催された第5回アジア作物学会議における講演論文を,審査のうえでPPSの特別号に掲載することになっています.なお,PPSの助成刊行に係る科学研究費補助金が採択になりましたし(昨年度実績より50万円多い420万円),次年度に向けての申請を行いました.
3.学会からの発信
前期のレビュー委員会によって「温故知新」が編集されましたが,今後も学会として定期的にレビューを行っていくために,この委員会が常設になりました.この委員会には定期的なレビューを担当してもらうだけでなく,学会からの発信を統括する役割を果たして頂きたいと考えております.次回の評議員会では,同委員会が日作紀およびPPSの編集委員会や関係者と協議しながら検討した結果として,日作紀における連載の開始や出版企画などについてご提案頂き,審議をお願いする予定です.会員だけを対象とするのでなく,広く社会に対しての発信を視野に入れて議論して頂きたいと考えております.
4.講演会・シンポジウム
第218回講演会(琉球大学)は超大型台風23号の直撃を受けたため,予定されていたいくつかの講演が行われませんでした.その分は,第219回講演会(日本大学生物資源科学部)でポスター発表をして頂いたうえで,前回に遡って発表を認めることとしました.第219回講演会および第220回講演会(岩手大学農学部)も,順調に準備が進んでおります.第219回講演会においては4件のミニシンポジウムが,また,第220回では「いわてから食と農を考える」「ダイズ・境界領域」の2件のシンポジウムが開催されます.
5.海外交流
第218回講演会では韓国作物学前会長で第5回世界作物学会議の組織委員長である李浩鎮先生にシンポジウムで講演して頂きましたし,中国作物学会副会長の万建民先生には第200課題として特別講演をお願いしました.その直後に,中国の武漢で開催された中国作物学会に,日本作物学会の代表として初めて森田が招待されて基調講演を行いました.また,第5回アジア作物学会議のビジネスミーテイングには,国分副会長や近藤海外交流委員長らに出席して頂きました.さらに,11月に筑波で開催された国際イネ研究会議では,上記のお二人を中心に学会として企画した高温・低温障害に関するワークショップが開催されました.
以上は今井前会長の路線を引き継ぐものでありますが,現在,中国および韓国からは積極的なアプローチがありますし,2007年にタイで第6回アジア作物学会議が,また2008年に韓国で第5回世界作物学会議が,それぞれ開催されますので,これを機会に日本作物学会としての海外交流に関する方針を,さらに明確にしていく必要があります.これは,次回の評議員会で議論して頂きたい点の一つであります.
6.会長・評議員選挙と学会活性化
会長・評議員選挙を若干,変更し,顔の見える会長と,さらに強力な評議員団を選出して,学会の活性化に結び付けたいと考えております.次回の評議員会ではできるだけ具体的なご提案をして審議して頂きたいと考えております.さらに,今期に設置した学会戦略WGの協力も得て,学会活性化をどうすすめていくかという点についてもご議論頂く予定です.
7.支部関係
昨年,支部会や談話会を中心に,すべての支部にお邪魔することができました.いずれも1-2日程度の短い滞在ではありましたが,それぞれ異なる歴史や特徴を持って活動されている様子や雰囲気を感じることができました.本会と支部が連携を深めながら発展できる方途を,今後も模索していきたいと考えており,この点も評議員会でご議論頂ければと考えております.
新潟県と福井県を中心にした水害のための農作物が大きな被害を受けたことは,記憶に新しいところです.北陸支部としてこの被害の調査研究を行うことになりましたので,本会としてこれを支援しました.
8.他団体との協力
日本学術会議から,日本作物学会に対して8名の会員候補者の推薦依頼がありました.研究実績に加えて,性別,年齢,地域などの条件を考慮しながら,両副会長と協議して候補者を選出し,ご本人のご了解を得たうえで推薦いたしました.
1月に日本農学賞の選考が行われ,8件の受賞が決まりました.今年は例年と異なり,秋にシンポジウムが開催されますが,遺伝子組み換え生物について取り上げる予定で,企画段階から根本幹事を通して協力しております.
日本植物生理学会から,遺伝子組み換え植物に関する研究についてアピールが行われることになり,日本作物学会へも協力の要請がありました.急ぎ,評議員の皆様への問いかけを行いましたが,積極的に同じ歩調を取るべきであるというご意見ばかりではありませんでした.そこで,今回すぐに共同歩調を取ることは見送り,次回の評議員会でご議論をお願いすることにしました.慎重に考え行動することが,問題の先送りや棚上げにならないように注意しながら,学会としての意志決定過程のあり方も含めて評議員会で議論して頂きたいと考えております.
JABEE関係は,前期からの路線を踏まえて,積極的に対応しております.
9.小合龍夫名誉会員からのご寄付
小合名誉会員から,日本作物学会に対してご寄付の申し入れを頂きましたので,取り急ぎお礼状をお送りしました.評議員会および総会でお認め頂いたうえで,有難く頂戴したいと考えております.なお,学会の活性化に結びつくような使途をと考えており,評議員会で具体的な提案を行ってご審議頂く予定です.