日本作物学会の会員の皆様へ
会長 丸山幸夫
(筑波大学生命環境系)
2016年4月から2年間,会長を務める機会を与えていただきました.学会長選挙において推薦いただいた先生方,信任していただいた会員の皆様方に厚く御礼申し上げます.前期執行部から学会運営の継承性を重視して推薦され信任していただきましたので,これまでの基本方針に基づき,執行部,評議員,各種委員会の方々と力を合わせて,学会の発展のために貢献したいと考えています.学会員の皆様におかれましては,ご支援,ご協力のほど宜しくお願い申し上げます.
本会は2017年に創立90周年を迎え,英文誌は20巻を発刊します.この間,学会誌の刊行や講演会の開催などの活動を通して,本会はわが国の作物生産における理論の構築と技術の確立に大きな役割を果してきました.しかし,近年の作物生産に関する課題が遺伝子から地球規模まで多様化,広範化,国際化する一方,関連組織の縮小に伴う会員数の減少や科研費の獲得機会の制約などにより,学会活動の多面的な展開を支える人的資源と財政基盤の維持が困難になりつつあります.これらの問題に対し,本会は歴代会長の下,学会誌の機能強化,国内外の関連学会との連携,若手・女性研究者の育成,出版部の設置,情報化の推進などの諸施策を講じてきました.このような中で,現在の学会規模と財政状況も考慮しながら,以下を重点に学会運営に取り組みたいと考えています.
1.効率的な学会運営と収入増加方策による学会財政の健全化
学会活動には安定した財政基盤が必要です.しかし,本会は2008年から会計収支が悪化し,平均すると毎年200~300万円の赤字を出しています.これまでは学会に蓄積された繰越金で赤字を埋め合わせてきましたが,それも数年で無くなります.現在,学会員の減少は下げ止まっているものの,今後の動向は楽観できません.まず,事務局・各種委員会の経費節約など効率的な学会運営と,出版物の刊行などによる収入増加により学会財政の健全化を目指します.さらに,今後の学会活動の内容と学会員の労力・費用の負担の在り方について検討を始めたいと考えています.
2.学会誌の対外的な発信力の強化と投稿促進ならびに掲載論文数の増加
英文誌は刊行後19年目を迎えました.2006年のオンライン投稿審査システムの導入以降,海外からの投稿数が飛躍的に増加し掲載論文数を確保してきました.前期の英文誌編集委員会の尽力により,2016年1月から海外の出版社への委託により英文誌の完全オンライン化が実現しました.今後は,新しいシステムを順調に稼働させ,投稿・掲載論文数が増加し,同時に論文の質が向上するよう努めていきます.一方,和文誌は投稿・掲載論文数が低迷していましたが,前期の和文誌編集委員会と学会員の努力により2015年には投稿・掲載論文数が増加に転じました.今期はこの傾向がさらに加速するよう和文誌編集委員会とともに工夫を重ねていきたいと思います.
3.学会講演会の国際化,学際化および効率的運営
講演会は一般講演,ポスター発表,シンポジウム,ミニシンポジウム,小集会などに加え,他学会との合同シンポジウムの開催,中国および韓国作物学会との国際セミナーなど,多様な内容で開催されるようになりました.また,優秀発表賞の審査,広報委員会のアウトリーチ活動,男女共同参画委員会による託児所の開設など,講演会を支援・活性化する活動も合わせて実施しています.しかし,このような多面的な活動は講演会開催機関の負担を増加させており,関連組織の縮小と相まって,これまでと同様に講演会を開催できるか予断を許さない状況になっていると認識しています.学際化・国際化の促進,支部会との連携強化,講演会開催機関の負担軽減を同時に達成する新たな効率的運営法を検討する予定です.
4.国内外の関連学会との連携強化
本学会と関係が深い国内の関連学会と講演会,あるいは,シンポジウムを合同開催する企画を立案し研究活動の連携を強化します.また,アジアをはじめ世界の作物学関連の学会や研究者との研究交流を深めます.これまでに交流を深めてきた中国作物学会,韓国作物学会との関係を発展させるとともに,第7回国際作物学会議(2016年,北京)および第9回アジア作物学会議(2017年)への学会員の参加を支援します.また,これらの会議の中で,日本・中国・韓国の作物学会が中心的役割を担うシンポジ ウムを開催します.
5.若手・女性研究者の育成
若手研究者の海外学会等への出席助成,講演会の優秀発表賞の授賞,学会講演会での託児所開設などの支援活動を継続して実施するとともに,若手・男女共同参画ワーキンググループと連携して若手・女性研究者の意見を学会活動に反映します.これらの活動により,若手・女性研究者が活躍しやすい環境づくりに尽力します.
以上の課題と取り組みについては,執行部,評議員,各種委員会,そして学会員の皆様のご意見を伺いながら進めていきます.学会員の皆様にはそれぞれの立場から学会活動に積極的にご参加くださるよう重ねて宜しくお願いいたします.