日本作物学会の会員の皆様へ
会長 丸山幸夫
(筑波大学生命環境系)
私が会長に就任してから10カ月が過ぎました.6月に今期の各種委員会・ワーキンググループの体制についてお知らせしましたが,今回はそれ以降の本会活動の概要を報告いたします.財政が非常に厳しい中,学会活動の根幹となる学会誌刊行と講演会開催を維持・活性化しつつ国際交流活動の展開に努めています.
第1回幹事会は7月9日(土)に東京大学農学部で開催され,新たな体制での学会活動計画が協議されました.とくに,科学研究費の国際情報発信強化(B)(Plant Production Science助成)の不採択による一般会計予算への影響が報告され,単年度収支の赤字額を減らすことが重要であることが確認されました.また,英文誌編集委員会から完全オンライン化されたPlant Production Scienceの編集が順調に進んでいること,将来構想検討ワーキンググループから具体的な検討が開始されたことが報告されました.
第7回国際作物学会議は8月14日(日)~19日(金)に中国・北京で開催されました.講演発表314課題,ポスター発表924課題,参加者1500人を超える大規模な国際学会でした.本学会では海外交流推進委員会の坂上潤一委員長を中心に,中国および韓国の作物学会との共催の特別セッションを準備しましたが,様々な事情があって一般セッションのClimate Change and Sustainabilityの一部として実施することになりました.本学会から白岩立彦副会長と山内章氏が話題提供を行い,坂上潤一氏が韓国作物学会のWoo氏とともに座長を務めて成功裡に終了しました.この会議には十数名の学会関係者が参加しましたが,その中には学会の若手研究者海外学会出席助成による参加者が4名含まれており,このうち2名の研究成果は優秀と認められ講演発表に選ばれました.なお,第8回国際作物学会議は2020年にカナダで開催される予定です.
第2回評議員会は9月9日(金)に龍谷大学瀬田キャンパスで開催され,学会の財政および活動状況が報告されるとともに,科学研究費の国際情報発信強化(B)不採択への対応,第9回および第10回アジア作物学会議への対応などが審議されました.学会賞選考委員会では大門弘幸委員長の下で,学会賞1件,研究奨励賞4件,技術賞1件,和文誌・英文誌論文賞各3件が決定され,日本農学賞候補者として平沢正氏が推薦されました.その後,日本農学会評議員会が1月20日(金)に開催され,平沢正氏の日本農学賞の受賞が決まりました.学会賞等と日本農学賞の受賞者に関する情報は,それぞれ本学会および日本農学会ホームページに公表されています.
第242回講演会は9月10日(土)~11日(日)に龍谷大学瀬田キャンパスで開催され,一般講演69課題,ポスター51課題が発表されました.シンポジウム1の「あんなかたち,こんなかたち,地域それぞれ人それぞれの6次産業」は,科学研究費の研究成果公開発表(B)に採択されたこともあり,学会員2名の他に異なる地域から5名の話題提供者を招いて行われ,一般市民の方々や学生にも分かりやすい内容で好評でした.シンポジウム2の「琵琶湖の環境と農業」は,専門分野の異なる龍谷大学および滋賀県関係者6名がそれぞれの視点から環境と農業について話題提供を行い,作物生産を他分野との関係で広く考える良い機会となりました.
前期に引き続き韓国作物学会と学会講演会への相互参加による交流を継続しています.韓国作物学会春季講演会は4月21日(木)~ 22日(金)に韓国南部にある統営市の統営マリナリゾート国際会議場で開催され,平沢正氏と私が招待講演を行いました.あいにく本学会秋季講演会の日程が,韓国作物学会海外交流担当のWoo氏が大会委員長を務める国際ソバシンポジウムと重複したため,韓国作物学会からの本学会第242回講演会への参加は1名にとどまりました.一方,韓国作物学会秋季講演会は10月20日(木)~21日(金)に韓国中部にある大田市の忠南大学で開催され,山岸順子副会長と中川博視氏が招待講演を行いました.なお,この講演会には若手・男女共同参画ワーキンググループの吉田ひろえ座長と安達俊輔委員が参加し,本年6月に韓国・済州で開催される第9回アジア作物学会議での共同シンポジウムの企画を韓国側に提案し議論を行いました.
平成29年度の科学研究費研究成果公開発表(B)については,シンポジウム委員会と第244回講演会開催予定の岐阜大学の松井勤氏との間で調整し,「10年後への中山間地域の農業像」という課題で申請しました.また,国際情報発信強化(B)PPS助成については,英文誌編集委員会の谷口光隆委員長と執行部との間で打ち合わせを行い,「オープンアクセス化を果たしたPlant Production Science誌の更なる国際情報発信展開」として平成29年度から5年間の予算申請をしました.本年4月に採択の吉報を待って学会運営に尽力したいと思います.
今年は6月に韓国・済州で第9回アジア作物学会議が開催されます.とくに若手研究者の国際交流を進め,2020年に開催予定の第10回アジア作物学会議,第8回国際作物学会議に向けて,日中韓三カ国の協力態勢を強めたいと思います.幸い,和文誌・英文誌への投稿論文数や学会講演会での発表課題数および参加者数は増加傾向にあり,学会活動が活発になっています.引き続き会員皆様のご協力をお願い申し上げる次第です.