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組織
2015年(平成27年)
優秀発表賞の受賞を目指して

畠山友翔 学生会員(九州大学)
 畠山会員は,大学院で光合成における暗呼吸の役割やミトコンドリアの細胞内配置の重要性について研究を行っています.植物のミトコンドリアの研究といった専門的で難しいテーマであるにもかかわらず,畠山会員はこれまで優秀発表賞を4回(口頭発表賞を2回,ポスター賞を2回)連続受賞しています.
 畠山会員は第240回講演会で開催された若手の会企画による小集会「あなたも表彰!?若手の会主催優秀ポスター発表賞授賞式」に参加し,自身のポスターの特徴について若手の会に参加した会員と意見交換を行いました.その中で,
・背景が分かりやすくまとめてあり,初めての人でも研究の内容を理解しやすい
・文章に比べ図が多く,しかも大きい
・文字が大きく見やすい
などが畠山会員のポスターの長所として挙がったそうです.畠山会員はポスター内に無理に全ての内容を収めようとせず,参考図などを別に準備して発表に用いることにより,ポスター紙面のスペースに余裕をもたせ,図表や文字を大きくする工夫をしているとのことです.
 これまで4回優秀発表賞を受賞している畠山会員も,講演会に参加し始めた頃は,多くの時間をかけて準備したポスター発表や口頭発表でもなかなか興味をもってもらえず悩んでいたそうです.講演発表で自身の研究を理解してもらい興味をもってもらえるかを常に考え努力することが,優秀発表賞へ選出されることにつながるのだと思います.もちろん,研究のオリジナリティーと自身の研究に対する情熱が欠かせないことは言うまでもありません.

  優秀発表賞を受賞した講演の要旨
日本作物学会第236回講演会(2013年9月,鹿児島大学)
日本作物学会第237回講演会(2014年3月,千葉大学)
日本作物学会第238回講演会(2014年9月,愛媛大学)
日本作物学会第239回講演会(2015年3月,日本大学)

畠山会員
 
別に準備した参考図を用いて説明を行なう畠山会員
 
大気中のCO2濃度上昇を「資源」とした作物の生産性向上を目指して

下野裕之会員(岩手大学)
 下野会員は,大気中のCO2濃度上昇に対する作物の品種間での応答性の違いに着目し,上昇するCO2を「資源」として効率的に生産性に結び付けることができる適応品種の選抜とその特性の解明を目標に研究を進めています(Shimonoら20092014).大気中のCO2濃度は産業革命以降に急速に増加し続けており,温室効果ガスとして気候変動を拡大することにより作物生産へのマイナスの影響を及ぼしています.一方で,イネ,コムギ,ダイズなどC3光合成回路を持つ作物種にとっては,現在からのCO2濃度の上昇は光合成速度を高めることで生産性にプラスに作用することが知られています.しかし,その程度は現行の品種を用いた場合,CO2濃度の200ppmの上昇で10〜20%の生産性の向上程度にとどまり,2050年までに期待される70%の需要増加(FAO, 2009) には遠く及びません.大気CO2濃度の上昇下で爆発的に収量を増加させる候補品種の選抜を目指した研究を世界の研究者と進めています.

Shimono, H., Okada, M., Yamakawa, Y., Nakamura, H., Kobayashi, K. and Hasegawa, T. (2009) Genotypic variation in rice yield enhancement by elevated CO2 relates to growth before heading, and not to maturity group. Journal of Experimental Botany 60: 523-532.
Shimono, H., Okzaki, Y., Jagadish, K., Sakai, H., Usui, Y., Hasegawa, T., Nakano, H. and Yoshinaga, S. (2014) Planting geometry as a pre-screening technique for identifying CO2 responsive rice genotypes: A case study of panicle number. Physiologia Plantarum152: 520-528.
FAO (2009) How to feed the world 2050. Rome 12-13 October 2009.

共同研究1
 
コムギの大気CO2濃度上昇への適応品種選抜についての
メルボルン大学(オーストラリア)との共同研究
 
共同研究2
 
熱帯イネの大気CO2濃度上昇への適応品種選抜についての
国際イネ研究所(フィリピン)との共同研究
2014年(平成26年)
山口県産小麦100%の地産地消パンをみんなといっしょに楽しみたくて

高橋 肇会員(山口大)
 高橋会員は,山口県産小麦粉100%でつくる山口県の地産地消パンの開発・普及について,山口県庁や関連の試験研究機関,地産地消を愛する市民のみなさんとともにとりくんできました.
 小麦は,農家が栽培・収穫したものを製粉工場で小麦粉に挽き,パン屋がパンに焼くことではじめて私たちの口に入ります.お米や野菜のように個人が畑で栽培して,自身で製粉した粉でパンを焼くということは難しいため,「おじいちゃんが畑でつくった小麦でパンを焼いている」という人はまずいないのです.
 山口県では,この小麦を山口県で地産地消しようと,西日本で最初のパン用小麦品種「ニシノカオリ」を奨励品種に採用し,地産地消パンの開発・普及に努めてきました.平成24年には学校給食パンの原料は100%山口県産小麦粉となりました.
 高橋会員は,山口大学の公開講座「小麦栽培から始めるパンづくり」を通じて,山口県産小麦の地産地消パンの魅力を市民に伝えるとともに,これら市民とともに山口県の地産地消を推進する「パン研究会」を立ち上げ,10年を超える活動を続けてきました.
 平成25年には,製パン適性のより高い「せときらら」が新たな奨励品種となりました.現在,一人でも多くのみなさんに「せときらら」の魅力を知っていただき,「せときらら」が山口県ブランドの強力粉となるよう活動しています.

高橋肇・徳永豊 2001.地元産小麦粉で作るパンをつかった地域育成プログラム. New Food Industry 43(5):41-47.
高橋肇 2009.難しいからこそおもしろい,地産地消のパンづくりに挑む〔1〕〔2〕.農業および園芸 84(2)(3):247-255, 327-333.
高橋肇・東野秀子・高田兼則 2012.コムギ品種ニシノカオリによる山口県産小麦粉を用いた地産地消パンの評価.日本食育学会誌 第6巻第4号:359-364.
高橋肇 2007.5.市民とともにとりくむ小麦栽培から始めるパンづくり(コムギの科学・うどんの文化,日本作物学会 第222回講演会シンポジウム2)または要旨集

高橋会員 高橋会員2
   
ダッチオーブンでパンを焼く高橋会員 親子パン教室で教える高橋会員
ダイズの生理生態と環境ストレス応答機構に基づく多収理論の構築と実証

国分牧衛会員(東北大学)
 国分会員は,東北農業試験場,農業研究センターおよび東北大学において長年にわたり「ダイズの多収性」について研究を行ってきました.
 まず,生理生態学的特性からみた多収性について研究を行い,ダイズ品種の収量性改良の道筋を理論的に体系化しました.その研究成果は,多収育種の基礎理論として内外で活用されています.
 次いで環境ストレスへの適応機構からみた収量の安定性について研究を進め,高CO2・高温,水ストレスおよび塩ストレスへの適応機構を解析し,ストレス耐性向上の可能性を示しました.さらに,研究成果を多くの専門書として,また子供用の教科書,絵本や図鑑として出版し,科学的知見の普及にも尽力しています.
 このように,国分会員は,ダイズの収量性改良の理論を発展させ,作物に関する知見の啓発に努めることにより,農学の発展に寄与したことが評価され,2014年4月に日本農学賞,読売農学賞を受賞しました(下記のHPを参照).

  http://www.ajass.jp/prize_9.html#H22

五月女敏範会員
オオムギ縞萎縮病抵抗性育種の効率化とビールオオムギ新品種の育成で
農業技術功労者表彰を受賞


五月女敏範会員(栃木県農業試験場)
 五月女会員は,「オオムギ縞萎縮病抵抗性育種の効率化とサチホゴールデン等の育成」で平成25年度「農業技術功労者表彰」を受賞されました.オオムギ縞萎縮病は,土壌伝染性の難防除ウイルス病で抵抗性品種以外に防除の手段がなく,ビールオオムギが罹病すると収量や品質が大きく低下します.これまでも抵抗性品種が育成されてきましたが,それらが持つ抵抗性遺伝子が侵され,1990年代半ば以降には再び産地で被害が拡大していました.
 そこで,国内で発生しているオオムギ縞萎縮ウイルスの各系統と既知の抵抗性遺伝子との関係や,V型(新型)ウイルス系統に抵抗性遺伝子rym3を持つ系統が育種の選抜過程で出現頻度が低くなるという育種上の課題を明らかにしました.また,アイソザイムを活用した抵抗性遺伝子の選抜・集積法を1995年に開発し,育種現場に導入を行いました.これらにより,「スカイゴールデン」(ビールオオムギ初の抵抗遺伝子集積品種),「サチホゴールデン」(新型系統抵抗性品種),「とちのいぶき」(非醸造用二条オオムギ初の抵抗遺伝子集積品種)といった抵抗性品種の開発を可能としました.
 今回の受賞にあたっては,アイソザイムを利用した分子選抜により育種の効率化を図ったことやこの手法はM.A.S.(Marker Assisted Selection:DNAマーカー選抜技術)の先駆けとなったこと,会員が選抜した抵抗性品種・系統が国内全ての抵抗性ビールオオムギ品種の親として活用されていること,品種の育成にあたり抵抗性のみならず実用性を重視したこと(例えば,「スカイゴールデン」は標準品種に比べて19%,「サチホゴールデン」は同じく24%,多収),そして育成した「スカイゴールデン」,「サチホゴールデン」は国内ビールオオムギの作付けの7割を占めるまで普及し,オオムギ縞萎縮病の被害を回避しビールオオムギの安定生産の実現に貢献したことが評価され,受賞となりました.   ビールオオムギは,工業原料と同様に優れた品質はもちろんのこと麦芽・醸造特性で1項目でも適性を持たないと品種になることはありません.そのため,これまではオオムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子1つを導入するのに20年以上を要してきました.加えて,ウイルスと抵抗性遺伝子とのいたちごっこ(抵抗性崩壊)は今後も起きるものと考えられます.そこで,会員の所属する栃木県農業試験場では,ウイルスとオオムギとの生物間相互作用に基づく抵抗性機構の解明と抵抗性崩壊の起きにくい効率的な品種開発に向けて,研究を始めています.

「農業技術功労者表彰」について
  http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/131122_1.htm

五月女敏範会員
2013年(平成25年)
アフリカの稲の研究で活躍する女性研究者

曽根千晴会員(秋田県立大学)
 曽根会員は,秋田県立大学でアフリカなどの不良環境下のイネの栽培管理技術や品種開発に関する研究を行っています.アフリカでは近年人口の増加と,生活水準の上昇にともないコメの消費が急増しており,これに対応するため,稲作が振興されています.ところが,アジアのイネ収量の著しい向上とは対照的にアフリカのイネ収量は低いままです.曽根会員は,これまでアフリカ地域で問題となっている低肥沃・塩類土壌や冠水条件下のイネの生産性向上に関わる栽培・生理学的研究を行い,その成果で,2013年に第17回日本作物学会研究奨励賞を受賞されました.現在は,アフリカの氾濫低湿地に適応した不耕起直播栽培技術の体系化に貢献すべく,アフリカのガーナの研究サイトで圃場栽培試験を展開しています.国内に拠点を置きながらアフリカの問題に取り組むことは,容易に現地サイトを見に行けない等もどかしい点もありますが,詳細な生理機構を国内の施設や機器を使って研究できる等利点もあります.日本とアフリカの双方で研究できる利点を活かし,今後も研究を続けていきたいと考えています.
 女性研究者として,男女共同参画の推進にも関わらず,結婚や出産,育児と研究の両立に不安や苦労を感じている同世代の女性の話を耳にすることがあり,モデルとなる先輩女性研究者の不足を感じることもあるそうです.また,現在は男女問わずパーマネントの研究職を得ることは容易ではありません.その点で作物学会には組織的な就職支援への取り組みを期待したいとのことでした.

イネ冠水実験系での収穫 ガーナ現地での圃場試験
   
イネ冠水実験系での収穫
ガーナ現地での圃場試験
ローズグラスの塩腺の研究で講演会優秀発表賞を受賞

大井崇生会員(名古屋大学)
 大井会員は,講演会優秀発表賞(35歳以下の会員が対象)を2回,受賞しています.そこで,魅力的なプレゼンテーションをするためのコツを聞きました. 大井会員の研究対象であるローズグラスは,世界各地で導入され,日本で最も普及している暖地型イネ科牧草であり,耐塩性が高いことなどから塩害地での活用も期待されています.大井会員らはこれまでに耐塩性に関わると考えられる“塩腺”と呼ばれる葉表皮上の構造の分布・外形・細胞内構造を電子顕微鏡観察により解明し1),塩腺から塩が排出される実態を捉え2),現在その塩排出メカニズムの解明に取り組んでいます.
 大井会員は「正確で分かりやすい発表を行うことは、精密で効率の良い実験を行うことと同様に,大切な研究活動の一環である」と大学生活で教えられてきたそうです.そのため新しい実験手法を学ぶように,本を読んだり,講習会に参加したりしてプレゼンテーションについても積極的に学ぶように心がけているそうです.本学会においても,大井会員は第233回講演会における若手の会企画の小集会「伝わるプレゼンの作り方」に発起人の一人として企画から参加していました.この小集会では,スライド作成時の注意点から具体的な図表作成技術,聴き手を納得させる情報伝達の考え方に至る話題が提供され,さらに参加者による実演を基にした意見交換が行われるといった充実した内容であり,以降の発表時にとても参考になったとのことでした.また,本番までに専門の異なる他研究室の友人等を相手に模擬発表を行い,率直な感想・意見をもらって修正を加えることを必ず行い,独りよがりな情報発信にならないように心がけているそうです.これらのことが2回の受賞につながったのだと思います.

<受賞発表の要旨および発表内容の論文>
1) 第230回日本作物学会講演会(2010年9月,北海道大学)
  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/230/0/230_0_184/_pdf
  Oi et al. (2012) Int. J. Plant Sci. 173: 454-463.
2) 第234回日本作物学会講演会(2012年9月,東北大学)
  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/234/0/234_108/_pdf
  Oi et al. (2013) Flora 208: 52-57.
   
<若手の会企画による小集会(12)」開催報告>
  第233回日本作物学会講演会(2012年3月,東京農工大学)
  https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcs/82/1/82_82/_pdf


小集会1 小集会2
   
若手の会企画による小集会(12)「伝わるプレゼンの作り方」の様子
(左:講演者による話題提供,右:参加した学会員らによる議論)

コムギ品種「きたほなみ」の育成と普及

吉村康弘会員(北海道立総合研究機構北見農業試験場)
 吉村会員をはじめとする北海道立総合研究機構北見農業試験場の麦類グループは,平成18年(2006年)に北海道の秋播コムギ品種「きたほなみ」を育成しました.「きたほなみ」は,平成24年(2012年)産で北海道のコムギ作付面積の約9割を占める約10万6千ヘクタール栽培され,生産量は国内産コムギの約5割に達しています.「きたほなみ」は,日本めん用として高い品質を誇るASW(オーストラリア・スタンダード・ホワイト)並の加工適性があり,ゆでめんの色と食感が優れているほか,製粉性も優れています.栽培性では,これまでにない多収性を実現し,「ホクシン」より約2割多収であることに加え,病害耐性や穂発芽耐性も向上しており,近年,収穫期に降雨に遭うことが増えている北海道のコムギ作において,安定生産性の向上にも貢献しています.加工利用では,高品質を利用したうどんなどの日本めん用のほか,収穫量の多さや安定生産性から利用拡大や用途開発が進み,品質特性と加工技術を生かして,菓子類やパン類への利用も進んでいます.
 この品種の普及に際しては,北海道の多くの作物学会の会員が関わり,高品質安定生産のための適切な栽培法の研究と普及指導が行われており,道内で順調に普及と生産性向上が進んでいます.

○うどんに最適な秋まき小麦品種「きたほなみ」について
http://www.agri.hro.or.jp/kitami/sosiki/mugirui/k81.pdf

○道総研ランチタイムセミナー「驚異の道産小麦「きたほなみ」の全て」(動画)
http://www.youtube.com/watch?v=SCuuVB7RXaY&list=
SPEA9CB969B01DC846&index=28&feature=plpp_video&noredirect=1



きたほなみ きたほなみ製品事例
   
イネの稈形質に関わる遺伝子の同定と利用

大川泰一郎会員(東京農工大学)
 大川会員は名古屋大学,農業生物資源研究所および富山県農林水産総合技術センターの会員等との共同研究で,イネの稈を強くして倒伏抵抗性を増すとともに、収量も増加させる遺伝子SCM2 を発見しました.稈が細くて倒伏しやすいコシヒカリに、稈が太くて倒伏しにくいハバタキのSCM2 遺伝子を含む染色体断片を入れた同質遺伝子系統(NIL-SCM2)を育成した結果,細胞分裂が促進され稈の外径が大きくなり,倒伏に強くなることを明らかにしました.また,この遺伝子の多面発現により,籾数が増加して収量が10%多くなることも分かりました.これらの成果は,2010年に Nature Communications 誌に掲載されるとともにNHKなど多くのメディアに取り上げられました.最近は、飼料イネの多収性、倒伏抵抗性の改良について研究し,作物生理学的な基礎研究の成果をもとに作物研究所と「リーフスター」を共同育成し,現在は強稈性遺伝子の集積による倒伏抵抗性品種の改良に関する研究を行っています.イネの多収化,強稈化に向けて,大川会員の今後の研究の発展に期待が寄せられています.

○発表論文
http://www.nature.com/ncomms/journal/v1/n8/abs/ncomms1132.html


大川01 大川02
   
コシヒカリにハバタキの強稈遺伝子SCM2を含む染色体断片をもつ準同質遺伝子系統NIL-SCM2
材料試験機による倒伏抵抗性に関わる稈基部節間の強度測定.
2012年(平成24年)
米と大豆加工品の放射性セシウム濃度の推定と希釈

藤村恵人会員(福島県農業総合センター)
佐藤 誠会員(福島県農業総合センター)
丹治克男会員(福島県農業総合センター)
 震災にともなう原子力発電所の事故により,食品の放射性セシウム汚染が問題となっています.そこで,福島県農業総合センターは学習院大学と共同して,玄米中の放射性セシウム濃度を穂揃期の地上部全体の濃度やポットで育てた幼苗の濃度から推定できることを明らかにしました.また,玄米を精米することや白米のとぎ回数を増やすことで放射性セシウム濃度が低くなることを見出しました.さらに,大豆では豆腐や味噌などへの加工の過程で行われる吸水や副材料の添加により,加工食品中の放射性セシウム濃度が原料の大豆に比べて低くなることを確認しました.これらの研究成果は,第234回日本作物学会講演会で発表されました.

○震災に関する発表等
福島県農業総合センター ホームページ「農業分野における放射性物質試験研究について」
http://www4.pref.fukushima.jp/nougyou-centre/kenkyuseika/kenkyu_seika_radiologic.html

<口頭発表>
藤村恵人ほか (2012)
玄米中放射性セシウム濃度の推定および土壌からの吸収リスクの作付け前診断
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/234/0/234_10/_pdf
佐藤誠ほか (2012) 精米歩合及び炊飯米の放射性セシウムの解析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/234/0/234_12/_pdf
丹治克男ほか (2012) 大豆の加工に伴う放射性セシウム濃度の動態
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/234/0/234_16/_pdf


福島01 福島02
摘心技術による大豆の安定多収化への挑戦

林元樹会員(愛知県農業総合試験場)
 林会員は,摘心技術を基軸とした大豆の安定多収が可能な栽培体系の確立について研究を行っています.愛知県の大豆は,生育過剰による倒伏やまん化の発生などにより収量が必ずしも高くありません.そこで,愛知県農業総合試験場作物研究部は,実用的な摘心栽培を可能とするため,「大豆省力摘心機」を試作しました.林会員は,この研究を進める中で,摘心処理が当初の目的である倒伏の抑制だけでなく,着莢数と子実重を増加させる効果があることを明らかにしました.これまでに,摘心処理を行うと分枝の着莢数が増加することを確認しており,これが増収の要因ではないかと考えています.さらに,過繁茂とならず「正常な」生育をする大豆でも増収効果(2割程度の増収)が確認されたことから,省力摘心機による摘心処理は,いわゆる「生育抑制技術」ではなく,「多収技術」になると考えています.今後は,名古屋大学大学院生命農学研究科の会員と,摘心処理から増収に至るメカニズムを解明する共同研究を行う予定です.

○最近の講演要旨(第232回講演会(2011年9月,山口大学))
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/232/0/232_0_104/_pdf

摘心技術による大豆の安定多収化への挑戦
雑草の埋土種子診断法の確立を目指して

小林浩幸会員(農研機構東北農業研究センター)
 小林会員は,「カバークロップ」や「リビングマルチ」による雑草防除の研究を進めており,最近,渡辺寛明会員(農研機構中央農業研究センター)とともに,雑草の埋土種子の調査法についてとりまとめました.作物の栽培の歴史は雑草との戦いの歴史と言っても過言ではありません.除草剤の効果や安全性が向上した現在においても,除草剤に耕種的防除法を組み合わせる総合防除が求められており,圃場における雑草の埋土種子の種類と量を把握して適切に防除することが必要です.雑草の埋土種子の種類は,採取した土壌から塩水選の方法を使って比重分離法で,あるいは水流を使って土壌を除去して取り出した後に,種子の標本や図鑑により判別するのが基本です.種子の比重は雑草の種類によって違い,たとえば同じイネ科の雑草でも,メヒシバでは比重が1.19,スズメノテッポウは1.32などと,それぞれ異なりますので,比重分離法では適切な濃度の塩類溶液を使用します.その後,押しつぶし法やTTC法により種子の生死を判定します.採取した種子を発芽させて同定が可能になるまで育てることもあります.小林会員は,現在,3次元形状認識に基づく雑草埋土種子の同定技術とその自動化にも取り組んでおり,土壌肥料分野で一般的になっている「土壌診断」のように「埋土種子診断」や「雑草診断」として確立したいと考えています.

○論文
小林浩幸・渡邊寛明 (2010) 雑草研究における埋土種子調査の目的と手法. 雑草研究55: 194-207 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed/55/3/55_3_194/_article/-char/ja/

○麦作・大豆作・水稲作の難防除雑草 埋土種子調査マニュアル
2009年5月 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター・東北農業研究センター・九州沖縄農業研究センター

埋土診断法
中学校で作物学が果たす役割が拡大

平尾健二会員(福岡教育大学)
 平尾会員は,「アフリカイネの収量関連形質に関する研究」を進めるとともに,教員養成課程の中学校技術科教員の養成に携わる中で「ペットボトルを利用したイネの栽培教材(ペットボトル稲)の開発」に取り組んでいます.中学校の学習指導要領の改定により,技術科においてこれまで選択内容であった「栽培」が,必修の「生物育成」になり,完全実施されることになりました.これまで工学的なものづくりばかりが実践されてきた技術科において,全国の教員の間で経験不足による戸惑い,不安が広がっています.そこで,平尾会員は,「ペットボトル稲」など中学校の栽培環境で実践することが可能な作物栽培法の開発を行っています.今回,中学校で必修化された「生物育成」の学習内容が充実すれば,将来,農学系を志望する生徒が育ち,農業や食料生産に関心を持つ市民が増えることにもつながると考えられます.このため,平尾会員は作物学会の会員に,それぞれの立場で,この問題への理解と協力を求めています.このことは,2011年の秋に山口大学で行われた第232回作物学会講演会で発表されており,講演要旨は下記のホームページで公開されています.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/232/0/232_0_294/_article/-char/ja/

佐藤導謙会員
北海道で農家として春播コムギの初冬播き栽培を実践

佐藤導謙会員(佐藤技術士事務所,農業自営,元北海道立中央農業試験場)
 佐藤会員は,「春播コムギの初冬播き栽培技術の開発」で2002年に第1回日本作物学会技術賞を受賞されたお一人です.その後,2006年に北海道立中央農業試験場を退職してUターン就農され,現在は農家の立場でこの技術を実践しています.佐藤会員は,北海道の北部・下川町にて14haの農地と15棟のビニルハウスを経営する地域では中堅クラスの農家で,露地ではコムギ,ソバなど,ハウスではネギ,サヤエンドウ,トマトなどを栽培しています.このうちコムギは,ご自身が育成にも携わった穂発芽に強い春播コムギ品種「はるきらり」をすべて初冬播きで栽培しています.2010年には地域の初冬播き栽培の主力品種「ハルユタカ」が穂発芽で全量規格外となる中で,佐藤会員の栽培した初冬播き栽培の「はるきらり」は反収4俵弱(1反は10a,1俵はコムギでは60kg)の規格品を出しました.北海道では秋播コムギの作付けが90%を超えますが,下川町では2002年ごろより春播コムギの初冬播き栽培が本格導入され,現在ではコムギ作付けの90%以上が春播コムギの初冬播き栽培となり,北海道内でも異色の地域となっています.このように,佐藤会員の活動は,作物学会の会員が自ら手掛けた技術を生産者として実践している貴重な例です.佐藤会員の研究は,以下の北海道立農業試験場報告第110号に博士論文としてまとめられています.

農業技術情報広場(北海道立総合研究機構農業研究本部)ホームページに掲載: http://www.agri.hro.or.jp/center/kankoubutsu/houkoku/houkoku6.htm

佐藤導謙会員
アフリカの伝統作物ササゲを通じて農民の生活の向上を!

村中聡会員(国際農林水産業研究センター)
 村中会員は,アフリカの乾燥地に重要なマメ科作物ササゲの研究・開発にとりくんでいます.アフリカの乾燥地域の貧しい小規模農家にとって,このササゲは重要なタンパク源であるとともに,貴重な現金収入の糧となっています.これまでササゲの育種目標は,収量性,耐乾性,病虫害耐性に置かれてきましたが,最近ではこれらの形質に加え,品質向上および付加価値化の必要性が提唱されています.現在,村中会員は,ナイジェリアにある国際熱帯農業研究所(IITA)を活動の拠点とし,現地消費者の嗜好に適した形質を備え,高栄養価(タンパク質,鉄・亜鉛等の微量要素)な有用育種素材を選定しています.
  これまでのアフリカ農業の現場に根ざした活動は,NHK地球ラジオの「にっぽんチャチャチャ−乾燥に強いササゲを作る」(2007年8月26日放送)や,読売新聞コラム「時間みつけ熱い現場みて」(2009年8月28日朝刊)などで取り上げられました.
 最近の村中会員の研究結果は,東京農工大学で行われた第233回作物学会講演会で発表されています.講演要旨は,下記のホームページにあります.
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcsproc/233/0/_contents/-char/ja/

この「熱帯作物開発プロジェクト」のページは以下の通りです. http://www.jircas.affrc.go.jp/program/ProB_4.html


写真1 写真2
米の食味評価法の確立と栽培環境の影響の解析に基づいた
良食味米の生産技術に関する研究


松江勇次会員(九州大)
 松江会員は,福岡県農業総合試験場において長年にわたり「米の食味(おいしさ)」の科学をテーマに研究を行ってきました.
まず,高精度で高効率な米の食味検定法を開発し,米の食味と理化学的特性との関係を解明しました.そして,水稲の栽培環境が米の食味におよぼす影響を解明し,食味からみた水稲品種の適応性と産地の適格性を解明しました.さらに,食味の多様性を解明するとともにDNAマーカーを開発するなど,遺伝子レベルでの食味研究を世界に先駆けて展開しました.理論と応用の両面を兼ね備えた研究成果は,広く国内外の生産現場に普及しています.
このように,松江会員は,米の食味に関する応用科学を農学の重要な研究分野として展開させ,農学の発展に寄与したことが評価されて, 2012年4月に日本農学賞,読売農学賞を受賞しました(下記のHPを参照).

http://www.ajass.jp/prize_9.html#H22


松江先生
東北大震災における地震・津波による農業被害

国分牧衛会員(東北大)
 国分会員は,津波被害を受けた太平洋沿岸農業地帯の水田や畑の被害状況について震災直後から調査を行い,被害の実態と復旧方策について提言を行っています.震災後に東北大学大学院農学研究科内に組織された「食・農・村の復興支援プロジェクト」(活動詳細は下記のHPを参照)のメンバーとして津波被害地の実態調査に参画し,同プロジェクトチーム企画のシンポジウムにおいて被害実態の調査結果や対応策について報告しています.また,日本学術会議や日本農学会の「東日本大震災の復興に対する農学の役割」ワーキンググループ,大学等主催のシンポジウムあるいはマスメディア等を通じて,これらの成果を報告しつつ復興策の提言を行っています.2012年9月には日本作物学会第234回講演会において,大震災に対する作物生産技術に関する公開シンポジウムをオーガナイザーとして計画しています.

【東日本大震災への作物栽培対応情報】
東北大震災における水稲の塩害の生理機構とその対策

近藤始彦会員(農研機構・作物研究所)
荒井裕見子会員(農研機構・作物研究所)
高井俊之会員(農研機構・作物研究所)
吉永悟志会員(農研機構・作物研究所)
岩澤紀生会員(農研機構・作物研究所)
 農研機構・作物研究所は,震災後に津波被害や液状化被害を受けた地域の水田の圃場・施設の被害状況や水稲の塩害障害を調査し,塩害対策について提言を行っています.
 液状化被害を受けた茨城県稲敷市においては,農地,灌漑排水施設の破損状況や,水路への塩類混入被害,水稲収量の塩類障害の影響を調査しています.また津波冠水を受けた水稲宮城県仙台市若林区,石巻市蛇田地区においては現地での耐塩性の品種評価試験を他機関と共同して実施しています.食用品種,飼料用品種など実用品種について耐塩性とその品種特性の評価を行うとともに,東北地域向けの耐塩性品種開発にも協力しています.これら活動から,高塩類の水田での栽培・品種対策について提言を行うとともに,耐塩性が比較的高い水稲品種や育種素材を見出し,日本作物学会などで公表しています.


【東日本大震災への作物栽培対応情報】
 
稲敷市における水田の液状化被害
(2011年3月)
 
稲敷市における水稲の塩類障害
(2011年7月)